路傍の花

安達太良山麓はわりと手つかずの自然が残っています。
折々の散歩に軽口を叩きましょう。

名誉院長 鈴木 孝雄

ホオノキ(朴の木)―T女史のオマージュ


ホオノキは成長が極めて速く大木になり、
大木にふさわしい大きな葉と
大きく見事な花をつけます。

普通にみられる花ですが、
高い木のてっぺんに咲くので、
気付く人が少ないようです。

岳ダムの湖面が見え隠れするニコニコ橋上は絶好のポイント、
毎年楽しみにしております。
対岸の山藤も見頃でした。


田中牧場のT女史を思い出します。

ある日、朴の花が咲いたから見に来いとT女史から電話が・・・。
広大な丘に30メートルのホオノキが
緑なす安達太良山を背に直立し、
まさに王者の貫禄。
見に行けない年は大きな花をつけた1メートルの枝が届き、
甘酸っぱい、強烈な芳香が家中に溢れました。

戦後、原野から牧草地を耕し、
FMクラシックを聴きながら乳を搾る、
誇り高き旧磐女卒業で、
自然と酪農の喜びを歌い、
モーツァルトを愛したT女史。

昭和63年11月、
「二本松みんなで第九を歌う会」演奏会、
渡部勝彦指揮山形交響楽団、
ソリストは二期会会員。
T女史78歳を筆頭に
中学生までの120余名が「歓喜の歌」を歌い、
感動を共にしましたことが。

臨終には「二重協奏曲K.299」をと遺言、
頑固者だから必ずと。

臨終の知らせを受けCDを持って駆けつけました。
安らかなお顔。

養子夫妻の好意で通夜、葬儀中、
モーツァルトが響きました。

T女史、明治43年生まれ、
98歳、天寿を全うしました。 

撮影:2019.5.18. ニコニコ橋より

2019.5.22



ウワミズザクラ


木々が日ごとに緑を深める頃
ウワミズザクラが咲きます。

楚々として目立ちませんが知る人ぞ知る、
「今年はよく咲きましたね」、
「花が大きくて見事ですね」などの
会話が弾みます。

この辺りに多く自生し、
10-20メートルの高木になります。

花は白色の総状花序、
穂状で長さ10-20センチ、幅2-3センチあります。

古名「ハハカ」(波波迦)は
古事記神話篇其の二(三浦佑之訳口語訳古事記による)に登場します。

戦時中でしたが、この有名な神話を小学校で習った鮮明な記憶が・・・

天岩戸前で神々の優麗なドラマが展開されます。
その時行われた太占(ふとまに)は雄鹿の肩甲骨を抜き取り、
裏側に溝をつけ天の香久山のウワミズザクラを燃やし、
そのひび割れで占う。
「占(裏)溝桜」とよばれるようになり、
それが転じたのが現在の和名説、
説得力があります。
(朝日新聞刊植物の世界5-123)

8月ごろ、高木を飾る赤紅色の果実は見応えがあります。

黒紫色に熟すと甘くなり、
さくら味、クマリン芳香の強い
美しい紅色の果実酒が出来ます。

撮影:2019.5.11. 自宅前にて

2019.5.14



地蔵坂のお地蔵さん


うしろで
優雅な、低い話し声がする。

ふりかえると人はいなくて
温和な石仏が三体

ふっと
口をつぐんでしまわれた。

秋が余りに静かなので
石仏であることをお忘れになって
お話などをなさったらしい。
(以下略)

石仏―晩秋 吉野弘「花と木のうた」より


保育所の前から急峻な地蔵坂を登り切ると、
三体のお地蔵さんが新緑の木漏れ日の中に並んでいます。

二体には顔がなく、
一番小さな一体だけに顔があります。

目の前でお父さん、お母さんが斬首されたのと言っています。

どんなに怖かったでしょうに
静かなやさしい声。

さらに山奥の奥岳地蔵尊、勢至平地蔵尊、岳小関周辺でも、
お地蔵さんの首切りが。

どうして、誰が、こんな山奥で。

慶応4年3月、明治新政府による「神仏分離令」などの法令が
矢継ぎ早に布告され、
廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)の
暴挙が行われました。

道端でみんなのために祈ってくださったのに。

誰も語ろうとしない明治維新の深い闇の証人。

撮影:2019.5.4 地蔵坂にて

2019.5.10



ウグイスカグラとモミジイチゴ(キイチゴ)


「今年はキイチゴの白い花が良く咲いたね」と言いながら、
傍らに特徴のある花を見つけました。

ウグイスカグラです。

高さ1-2メートルの細い枝から淡紅色のやや曲がった漏斗形、
花筒部が細長く2センチぐらいの花の形が実にユニークです。

ウグイスが鳴くころ咲くのでウグイスカグラ、
カグラは花の形を神楽の舞に見立ててこう呼ぶと。

花の形、名前は一度見聞きしたら忘れられませんが、
林の中から自力で発見できるかどうか。
私は春の山歩き中、山仲間から得意げに教えてもらいました。

なお液果は6月に鮮紅色に熟し、
甘く食べられます。


モミジイチゴは普通に山野に生え、
開けた林縁などでは群落してヤブとなり、
全身棘で武装した木が足にまとわりつき実に歩きにくい。

葉がモミジに似るのでこの名が、
日本名 木苺、黄苺もその特質を表しています。

生活史が特異で、
「木」であるのに地上茎の寿命が1年数か月と短く、
絶えず地上部の交代を行います。

多年生草本類に似た生活環で
「木と草の中間植物」と言われます。

枝に3センチの清楚な白い花の連なる姿が素敵ですが、
なんと言っても7月初め黄橙色に熟した果実が甘く美味しい。

棘が多いので恐る恐る掌を実の下に添えると、
待っていたとばかり、
実のほうから容易に落ちてくる感触がまた実に素晴らしいです。

撮影:2019.4.29 湯の森公園の裏山林縁にて

2019.5.2



キクサキイチゲ(キクザキイチリンソウ)


日課の福太郎(愛犬)散歩です。

深堀部落からの急な山道で白い花を見つけました。

咲き始めたばかりか下向きのイチリンソウ、
翌日も早朝のためかまだ俯いていました。

そして、気持ちよく晴れた午前11時、
3度目の正直、
長楕円形の花弁状のがく片が全平開、
菊の花に見立てキクザキイチゲ(キクザキイチリンソウ)と呼ばれます。

淡紫色の花が多いが、白色が清楚でとても美しい。

近くの林床にはめいっぱいに反りかえった美しいカタクリが、
かつての銀輪の女王の優美な姿を思い出させます。


これらの早春植物は木々の葉や草が茂る前の、
わずか1-2か月の間に1年の生活エネルギーを蓄え、
地上部が枯れ、生活を終えます。

スプリング・エフェメラル(春のはかない命)と言われますが、
一方で自然の逞しさが感じられます。


撮影:2019.4.22 深堀部落の山道にて

2019.4.25



タネツケバナ


しばらくお休みしていた散策をはじめ、
足元のそよ風に揺れる小さな草花に感嘆しました。

紫色の茎の天辺に白い十字の小花をつけたタネツケバナ、
愛らしく道化たようなヒメオドリコソウ、
ブルーの宝石を撒き散らしているイヌノフグリ、
葉陰に隠れた純白の小さなコハコベ。

そして辺りにはそっと顔を出したツクシ、
ラッパ水仙が咲き競っています。

ひそひそ語り合いか、歌っているのか、
春を奏でているのでしょう―通奏低音と変奏。

本題のタネツケバナ(種漬花)は苗代を作る前に
米の「種もみ」を水に漬ける頃咲くところからつけられましたが、
水田や道端など日本中、普通に見られるコスモポリタンな雑草です。


撮影:2019.4.14  自宅近くの空き地にて

2019.4.17


スノードロップ


むき出しの寒々としたほの暗い、
そして
ライバルの花が一つとして咲かない場所に、
  美しい宝石の花が開く。
   メアリ・ロビンソン(L・ディーズ「花精伝説」より)

 わが庭で春一番に咲く純白の花、
スノードロップ。

今年の10月に目出度く百歳になる患者さんのFさんから頂いた1株が
大きい株となり、また株数も増えた。
20年も前のことだったが、名前は知らないと...

例年だとまだ風が冷たく、
雪が残る寒々とした庭は滅多に歩かず、
また、雪よりも白い花の異国的な雰囲気から園芸種と考え、
それ以上の検索を怠っていた。

ところが調べてみて驚いた。
ヨーロッパでは特別な花だと知った。

宗教とのかかわりが深く、
たくさんの神話や伝説、詩に登場する。

スノードロップ(英名)は「雪の雫」、
または「雪の耳飾り」の意である。

花言葉も多く、
イギリスでは「希望」、「慰め」、「まさかの時の友情」、
フランスではさらに「恋の最初のまなざし」、「楽しい予告」など。

撮影:2019.3.5 庭にて

2019.3.5



オオイヌノフグリ


 冷たかった風が止み、
気持ちがいい早朝散歩、
青空に浮かんだように白銀の安達太良山連峰が輝いていました。

そして気温が上昇した11時過ぎ、
狙い通り、オオイヌノフグリの全開です。

それは近くの旧深堀温泉跡地のほぼ真南面の急な土手、
直射日光に温まり青空に染まり、
瑠璃色というのか、
コバルトブルーというのか、
少し無機的なラピスラズリか。

オオイヌノフグリは2年草で秋芽生えが厳しい冬に耐えに耐え、
明るい陽光に目を覚まし、
いち早く春を告げます。

毎年日本中で春の風景として親しまれ、
私もそうですが、
ドキドキしながらオオイヌノフグリの開花を待つ人が多いでしょう。

また、実は西アジア原産、ヨーロッパかアメリカ経由で
日本へ侵入帰化した植物と聞いて驚く人も多いでしょう。。

イヌノフグリとは「犬の陰嚢」のこと、
実の形と細毛の生え具合が名のいわれで、
犬の局所をとくと観察し、
似ているぞとひざをうった人がいたそうです。 

撮影:20192.24 深堀部落

2019.2.26



ヤドリギ ーその3ー


このヤドリギの写真は街でもよく見るけれど、
木の病気の天狗巣病と思っていたと言われ、
間違ったかと急に心配になりました。

はるか頭上の梢に望遠レンズの焦点を合わせ凝視したら、
眩暈しました。

両足を一杯に踏ん張り下を見ると、
房状に4,5個連なったほんの5,6㎜の果実を発見。
もちもち、ぷりぷり、
まるで小ゴム球、
ヤドリギに間違いなしと確信しました。

 麓次郎著「季節の花事典」(八坂書房)は
ヤドリギについて大変詳しいです。
 万葉の昔から祝いの木として知られていると、
大友家持の一首を紹介しています。

 「あしびきの山の木末(こぬれ)の寄生(ほよ)取りて
挿頭(かざ)しつらくは千年寿(は)ぐとぞ」
(注:ほよはヤドリギの古名)

 日本古典にみられるヤドリギについて
「枕草子」、「源氏物語」を紹介。
「根無し草」、「他木に寄って生きる頼りなさ」を表しているそうです。

 一方、ヨーロッパでは小木、
かつ地に根がないのに冬でも常緑、
大木を自分の奴隷として栄養分を供給させている。

つまり、「弱者よく強者を制する」この神秘力が崇拝されており、
ヤドリギの花言葉は「征服」、「堅忍不抜」、「困難に打ち勝つ」。

 日本人と西洋人のものの考えた方の相違をよく表していますね。

撮影:2019.2.5 ヤドリギ果実

2019.2.11



ヤドリギ -その2-


ヤドリギは常緑で半寄生のれっきとした灌木(低木)です。
 
南日本ではエノキに、
北日本ではミズナラに寄生する場合が多いが、
サクラやブナにも寄生します(堀田満による)。

寄生すると栄養の大部分や場所を宿主に依存しますが、
半寄生とは水分と栄養素は依存するけれど、
光合成能力は持つものです。
それぞれの種として生存や繁殖に都合よいように進化したものと考えられます。

ヤドリギの実を食べた野鳥がフンをしてフンに混じった種
(粘着力が強いビシンという物質に覆われている)が
枝にとりつき発芽することから始まります。

成長すると団塊状の、
写真のように大小さまざまな腫瘤状の株を形成します。

私には職業柄、異様な光景(がん転移)に見えるので心配です。
個人的な感想は別としても、
ヤドリギが寄生した枝先は樹勢が弱り、
枯れているように見えます。

須賀紀一氏(二本松市文化財保護審議会会長)によれば、
安達太良山麓、岳温泉周辺のミズナラとコナラの混交林は
たいへん珍しく貴重だとのことです。
大切にしたいと思います。

2019.1.19 旧S邸にて 望遠レンズ使用   
黄色の実がたくさん連なっております

2019.1.21



ヤドリギ -その1-


冬の風物詩というべき、
天空を刺す孤影悄然たる楢(ナラ)の冬木立に近頃、
気になる光景を発見します。

ヤドリギです。
 
幹や枝の中、はじめは蜘蛛の巣や鳥の巣のようにぼんやりしていますが、
年々大きくなり大小の丸い腫瘤をつくり、
すごく気になるのです。

ヤドリギ(宿り木)は寄生植物です。

西洋では神聖な植物とされ、
特にオークに宿るものはもっとも珍重されました。
クリスマスや正月に飾り、
その下で恋人がキスすると「いいこと」があるのだそうです。

ところで、オークはどんな木?

名著「野生の樹木園」(マーリオ・リゴーニ・ステルン著)によりますと、
ブナ科コナラ属、種類に富み300種ほどを数え、
いずれの種も頑丈で抵抗性に富み、
なかには高さが40から50メートル、
幹まわりが8から10メートルに達します。

古くケルト族やギリシャ神話、
偉大な芸術作品(詩、絵画、文芸)を飾り、
その特性と荘厳さゆえにつねに人々から崇拝されました。
「オークの森はかくも神聖なものであり、
ためにカエサル(ローマ皇帝)の兵士でさえ、
これを伐るのを怯んだ。」

洋の東西を問わず、鎮守の森に神宿る「神木」物語で素晴らしい。

2019.1.13 旧S邸にて 

2019.1.21



ヒマラヤスギ(ヒマラヤ杉)-その2-


生まれは(原産地)ヒマラヤ北西部からアフガニスタン東部、
日本には明治初期に渡来した。

名前は杉だが松の仲間、
庭や公園に広く移植された。

成長が早く30メートルに達するが、
成熟には30年の月日がかかる。

10月中旬、花粉を辺り一面にまき散らし、まるで黄色の吹雪。
天辺にある雌花が受粉、球果をつくる。

成熟には1年以上かかるが、これが松ぼっくり、
「シダーローズ」になるそうだ。

2018.12. 8撮影 屋上から


付記:文明の脅威
レバノン杉―悲しい物語

 ヒマラヤスギの近い仲間だが、
分布域が異なりシリアを中心と地中海東部沿岸。
 ここに古代文明が次々と生まれ栄えた。
 古くから建築用材として、古代エジプトの神殿に、
また、ローマ軍の船となり地中海を駆けめぐり。
乱伐と醜い争い。
文明がレバノン杉を殺した。

2018.12.19




ヒマラヤスギ(ヒマラヤ杉)-その1-

 

兄からもらったヒマラヤスギの若木、
昭和49年12月開院した翌年、
ブルで掘り起こされた荒れ地に移植した。

10本のシラカバで囲むようにしたら、
区画だけの庭は土色の空白だらけ。

これあげるよ、きれいな花が咲くよ、
この栗、5年もしたらなるぞ、
善意に甘え手当たり植えた。

空白がなくなり緑で染まった。
・・・
友人が言った、「まるで森の中みたい」

別荘のおばばさんが言った、「まるでお化け屋敷」
・・・

そして43年間、風雪に耐えた
ヒマラヤスギは堂々と逞しくなった。

2018.12. 9撮影 自宅前にて

2018.12.17

 


ウワミズザクラ


秋たけなわになりテレビに紅葉情報が報じられると、
朝夕、車のラッシュが続きます。
紅葉の名所として名高い安達太良山の山懐に住んでいる宿命みたいなものですが。
 
快晴となった昨日の朝、
わが家の玄関、勉強部屋、北側の寝室の窓がほんのりとピンクに染まりました。
駐車場前林の紅葉したウワミズザクラの照り返しでした。

ウワミズザクラはこの辺りに多い高木ですが、
いち早く色づいて秋の深まりを伝えてくれます。
少し濃いピンク色が明るく落ち着いた優しさがあります。
 大好きです。

実はウワミズザクラは春の花が素敵なのです。
お花見に賑わった桜(ソメイヨシノ)がすっかり散り、
木々が日ごとに緑を深める中に白い小さな花が総状に咲きます。
 明るい日中は目立ちませんが、
日が陰り夕暮れが迫るころ白い花穂が点々と浮かび、
まるで妖精が踊るようで幻想的です。

また、夏の終わりごろ、果実が濃いオレンジ色に輝きます。
そして熟すと最高の果樹酒となります。

古代、このウワミズザクラ(古名「波波迦」)を燃やして「占い」をしました。
古事記の神話です。

美しく、興味が尽きない木々に囲まれて幸せです。

2018.10.26撮影 自宅前の林

2018.10.27


マユミ(1)



マユミは昔この材で弓を作ったことにより、
強靭な弓、真弓と名付けられました。

そして安達太良真弓が、わが国最古の歌集「万葉集」の中に詠われ、
今風に言えば、「いいね」とフォローされたのでしょうか、
歌枕として多くの和歌に詠まれるようになりました。
奈良・平安時代のことです。

辺鄙な東北地方から都への情報発信の機会はごくごく限られたものでしたから、
そのインパクトが大きかったものと想像されます。

万葉集にはその1 
「陸奥(みちのく)の安達太良真弓弦(つる)箸(は)けて
引かばか人の我を言(こと)成さむ」
(巻7・1329)

その2
「陸奥(みちのく)の安達太良真弓弾(はじ)き置きて
反(せ)らしめ来(き)なば弦(つる)箸(は)かめかも」
(巻14・3437)

もう1首、安達太良山に関する歌があります。

その3
「安達太良の嶺(ね)に伏す 鹿猪(しし)のありつつも
吾(われ)至らむ寝処(ねど)な去りそね」
(巻14・3428) 

万葉集には東北地方を詠んだ歌が8首ありますが、
その中の3首がなんと上記の安達太良山の歌でした。

毎年、花と実をたくさんつけますが、今年は少ないようです。

2018.9.20撮影 鏡ヶ池畔にて(背景は安達太良山)

2018.10.16


マユミ(2)

マユミの花と実


マユミは初夏に緑白色の小さな花を多数つけ、
晩秋には鮮紅色の果実が熟し眩しいほどになります。

しかし、万葉集の安達太良真弓は植物そのものを詠んだものでなく
強い弓の比喩として、引く、心をとらえると解釈されています。

「安達太良真弓」について、
高橋富雄氏(元東北大教授)のユニークなご高説を紹介します。

その1は
「安達太良真弓の弓取りとして名の知られたわしだ。
弓に弦を張って射たならば百発百中、
弓に矢を構えただけで、もう勝負あったと人は言うだろう」
その心は
「この名手のおれがこれと見定めて、お前と決めたのであるぞ。
四の五は言わせん、みんなもう決まったと言うだろうよ」

一方、その2は
「いくら名手名人でも、平素の手入れを怠って弓を外してしまったならば、
いざという時、弦を張ろうとしても弓はしなりませんよ」
その心は
「恋人である、愛しているとおっしゃっても口先ばかり、
平素ちっとも構って下さらないで、急にそう言い寄られてもこちらはその気になれませんことよ」
 
二人は相思相愛の仲。
まことにリアルで感動的です。
ここに「安達太良真弓士」の雄姿と万葉ロマンが華々しく登場したのです。

画像は院長 Libraryより 自宅庭と近所のY氏宅にて

2018.10.16


アキノキリンソウ



湯の森公園でアキノキリンソウを見つけました。

登山道などではよく見ますが、
この辺では少ないので、開花を毎年心待ちにしております。

 花は秋に咲く黄金色の代表の一つ。
清楚でふくよか、優しい感じが素敵です。

大きな木陰や植え込みの縁に10本も見つけました。



 湯の森公園は温泉神社境内にあります。

樹高10メートルを超すスギ、アカマツ、コナラの木立の中の小さな公園です。
 
自然が残っていますので、チゴユリ、ギンラン、トラノオなど
野生の花や眩いほどの新緑が自慢ですが、訪れる人は少ない。

2018.9.26撮影 湯の森公園にて

2018. 9.26


ヤマハギ(ハギ 芽木 萩)

 

緑ヶ池周遊道の北側急斜面に数十株の萩が咲いています。
紅紫色の花が枝垂れる姿が美しいです。

 古くから日本人は萩を愛でてきました。

万葉集に141首、集中で花としては1番多く詠まれています。
「秋風は涼しくなりぬ馬並めていざ野に行かな萩が花見に」(10.二一〇三)と
萩の花見に出かけました。
(松田修著万葉の植物から)

 ハギにはいくつかの種類があり、自生する多くはヤマハギです。

「萩」は日本字で、草冠に秋と書いてハギと読みます。
山道で萩を見ると、もう秋かと感傷的になりますね。



 緑ヶ丘からは安達太良山を中心に連なる十連峰のパノラマが楽しめます。
穏やかな懐かしさがあります。
地元では安達太良山を「乳首山」と呼びます。

2018.9.19撮影 緑ヶ池周遊道にて

2018. 9.20


 

ウドとヨウシュヤマゴボウ

何処からともなくやって来て堂々と居座り、
花を咲かせる野草たちはわが家の楽しい客人です。



 成長が早く、大きな葉、茎、背丈が1.5メートルにもなるウドは
「独活の大木」と役立たずの諺とされます。

しかし、春には若芽や茎の酢の物、味噌汁、キンピラは独特の風味が絶品です。
店頭の栽培物は味が落ちますが。



ヨウシュヤマゴボウ(洋種山牛蒡)も大型です。

北アメリカ原産の帰化植物で有毒です。

小さい花や穂は下に垂れ、黒紫色の実は潰れやすく、
汁がつくとなかなか落ちません。
 昔、悪徳商人が安ブドウ酒の色付けに使ったそうです。

2018.9.12撮影 庭にて

2018. 9.14



オミナエシ



山道で優しい黄色のいかにも女性的なオミナエシを見つけるとうれしくなります。

またもう少し秋が深くなったころ、
「私ここよ」とひっこり顔を見せてくれる「ワレモコウ」(吾亦紅)も
近頃では出会うことがなくなり、すっかり「花屋さんの花」になってしまいました。
 
謡曲「女郎花」(おみなめし)は罪深い男女の情念と苦しみを歌いますが、
平安時代には貴族の夫人や令嬢を「女郎」と呼称したそうで、
黄色の花の華やかさ、優しさが愛でられたものと思われます。
秋の七草の一つ、万葉集にも詠われています。

2018.8.31撮影 R氏別荘にて

2018.09.01


ツユクサ

 

近くの草むらで「ツユクサ」を見つけた。
濃い青色にハッとする。
身近にある草花だが、早朝に咲き、
午後にはしぼんでしまうので、
見過ごしてしまうのかもしれない。

「青」の表現は難しいですが、ツユクサは深い青で、
6年前に東京で見たフェルメール ウルトラマリンブルーを思い出しました。
古くは「ツキクサ」と呼ばれ、青い花びらで衣を染めたそうです。
万葉集に詠われています。

2018.08.24